古くからの知人であり、当時it-tellsのプロデューサーだった竹崎さんから、突然連絡があったのは2014年の2月のことでした。
「永野さんにお願いしたい仕事があるんだけど……ちょっと話を聞いてみて」。待ち合わせ場所に出向いて、見せられたのが当時のit-tellsのページでした。当時から見た目は、今のit-tellsとそれほど変わりはありませんでした。it-tellsのコンセプトについてひととおり説明を聞いたあと、竹崎さんからされたオーダーは「セガブランドのゲームの話題以外で、おもしろそうなコミュニティをピックアップして広めてほしい」。たったこれだけでした。私がit-tellsでの活動を始めるにあたり、竹崎さんと個別にミーティングをしたのはあとにも先にもこの日一度だけです。そこからもろもろの準備をして、2014年の8月に『今週もいったる!』がスタートし、今に至るわけですが、竹崎さんが想定していた「永野にしてほしかったこと」と、自分がやってきたことは当時も今もぶれていないんじゃないかと思っています。
it-tellsという集合住宅を建て終わったばかりのころ、入居当時はぶっちゃけ住み心地はあまりよくなくてストレスも溜まりました。ベランダが狭すぎたり、階段が昇りにくかったり、たまに手すりが取れちゃったりしてね! でもそこからベランダを広くしたり、手すりを取り替えたり、セキュリティーを強化したり……時間はかかりましたけど、使いにくいところを少しずつ修理して、たまに大きなリフォームをしたときは住人のみなさんを招いてごちそうを振るまったり……。
そうやって、ちょっとずつ、ちょっとずつ、住み心地をよくしていって、今の「メゾン・ド・it-tells」ができあがりました。最初から住んでる人は「気づいたらずいぶん住み心地よくなったじゃん」って言ってくれるし、最近入居してきた人は「日当りいいなー」って言ってくれるし。そうやってできあがった大事な、大事な住まいが更地にされちゃうなんて、建築家も大工も管理会社も住人も、みんな納得できないに決まってる! あんまりだよ! と、まあ個人的にはそういう気持ちではあるんですが、サグラダ・ファミリアなんかね、134年も造っていて、未だに完成していないわけですから、そう考えると「メゾン・ド・it-tells」はちゃんと完成したわけで、まあいいかなと、it-tellsえらいぞ!と、ムリヤリ自分を納得させることにしました。
先日の交流会で、「it-tellsの「そうだね!」はTwitterの「いいね!」より気軽に押せてTwitterのリツイートよりうれしい」という感想をいただき、「なるほどな」と思いました。自分のさじ加減でタイムラインの勢いをコントロールできるit-tellsは、「いわゆるSNS疲れ」するようなことはない快適な場所でした。
ゲーム雑誌で編集の仕事しているとき、任天堂の宮本茂さんにインタビューさせていただく機会が数回ありました。宮本さんが発する言葉は「至言の連続」でいつもワクワクするような体験でした。なかでも「その人がプレイしてないときも、そのゲームのことをいっつも考えている……そんなゲームが作れたら本望ですよね」というコメントは今でも忘れられません。実際、宮本さんはそういうゲームをたくさん生み出してきたわけです。昔、『ゼルダの伝説』をプレイしているときは、毎日、仕事中も神殿の入り口とかボスの倒し方のことばかり考えていました。
こうして振り返ってみると、it-tellsでもそんなことがあったなと気づきました。美味しいご飯を食べたとき、ゲームでイケてるスクリーンショットが撮れたとき、見たことのないような形の雲を見つけたとき、おかしな看板を見かけたとき……「あ、これあとでit-tellsに投稿しよっと」って。気がつくとit-tellsありきの日常がありました。「ログインしてないときも、it-tellsのことを考えてたよ」そんなふうに思ってくれている人がほかにもいたら、それはサービスを提供する側にとっては、最高の褒め言葉だと思います。
it-tellsでの活動をとおして、やり残したことがあります。自分自身も『PSO2』をちゃんとプレイして、it-tellsで知りあった『PSO2』ユーザーのみなさんとも、今後はゲーム内で交流をしたかったのですけれども、PS4版のリリースとit-tellsのサービス終了がほぼ重なってしまいました。「PS VITA版のキャラを引っ越しさせるとかなりイメージ変わりますよー」ってアドバイスをいただいたので、PS4で新たに作り直すことにしました! キャラを作ったらTwitterでキャラ名とShipを載せておきますので、フォロアー同士の方は、お気軽にお声がけいただけるとうれしいです。というか、戦い方を指導してください(´Д`)。
「応援隊長」と称して『今週もいったる!』を連載してきましたが、連載スタートから今までit-tellsのいちユーザーとして、みなさんと同じスタンスで自由に活動してきたつもりです。いろいろな発見や出会いがあってとても楽しかった。SNSやオンラインゲームには、つねに出会いと別れがつきまといます。it-tellsとしてはここでお別れになりますが、インターネットの世界が続く限り、またどこかで出会いがあるかもしれません。いろんなところで関わってくれた、みなさん本当にありがとうございます。またどこかでね!
it-tells応援隊長 イザベラ永野